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2018年2月21日 (水)

太平記 現代語訳 27-1 次々と出現する怪奇現象に、人々は不安におののいている

太平記 現代語訳 インデックス6 (その中に [主要人物・登場箇所リスト]へのリンクもあり)

この現代語訳は、原文に忠実なものではありません。様々な脚色等が施されています。

太平記に記述されている事は、史実であるのかどうか、よく分かりません。太平記に書かれていることを、綿密な検証を経ることなく、史実であると考えるのは、危険な行為であろうと思われます。
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京都朝年号・貞和(じょうわ)5年(1349)1月頃より、日本列島上の天空に、異変が続出しはじめた。

妖星(ようせい)の出現相次ぎ、人々は不安にかられるばかり。天文局(注1)からは、「帝位に愁いあり、天下に異変起こり、兵乱疫病のおそれあり」との密奏が、朝廷に対して頻繁に寄せられた。

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(注1)原文では、「陰陽寮(おんみょうりょう)」。
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世間の声A ほんまに、最近、こわい事ばっかしどすなぁ。

世間の声B いったいぜんたい、世の中、どないなってしもてんねん?

世間の声C ほんに、今年はエライ年になってしまいよりましたわ。正月早々、例の妖星出現でっしゃろ。ほいでもって、2月26日のあの大騒ぎですやん。

世間の声D あの晩な、わたい、たまたま、現場近くにおりましたんやわ。ほんま、どえらい事でしたでぇ! 夜半過ぎごろやったかいなぁ、将軍塚(しょうぐんづか:東山区)が、ガタガタ音立てて動き出しましてなぁ・・・。ほいでもって、空中に大量の馬のヒズメの音がなり響き、ですわいな。そうですなぁ、かれこれ1時間ほどは、続いてましたかいなぁ。

世間の声E あの夜はなぁ、京都中もう、上から下まで大騒ぎやった。わてらも、こわぁてこわぁて、あれいったいなんかいなぁ、言うて、おびえとりましたがな。

世間の声C それに輪ぁかけて、翌2月27日のあの火事やがな。

世間の声A あの火事、ほんま、すごかったどすえぇ。うち、あの日たまたま仕事でな、あのへん通りがかりましてな、ほいで、一部始終、目撃してしまいましてん。

世間の声一同 へーぇ!

世間の声A ほんま、あの火事だけは、もう一生忘れられしまへんやろなぁ。正午ごろにな、清水坂(きよみずざか:東山区)から火ぃ出たぁ思ぉたら、もうそっから後は、イッキでしたわ。

世間の声B 清水寺(きよみずでら)の本堂、阿弥陀堂(あみだどう)、楼門、清水の舞台、地主(じしゅ)神社、あっという間に、みんな残らず、焼け落ちてしもぉたもんなぁ。

世間の声A そらな、京都では、火事はそれほど珍しい事やおへん。そやけど、あの火事は、ほんま不気味どしたえ。なぁんせ、風もなぁも吹いてへんのにな、最初に出火したとっから(所から)大きな炎が飛び出しよりましてな、ほいでもって、あっという間に、清水はんに燃え移ってしもたんどすぅ。

世間の声C 最初の出火場所から清水寺までは、相当な距離やいうやないか?

世間の声A そうどす、その通りどす、そやから、不気味なんどすぅ。朝廷の尊い祈願所の清水はんが、あっという間に焼けてしまうやなんて、ほんまにこれは、タダゴトやおへんえぇ。

世間の声F あのっさぁー、天下に大異変が起こる時にはっさぁー、その前兆としてっさぁ、霊験あらたかな神社仏閣が、燃え落ちちゃうもんなんだよねぇー。

世間の声D いやほんま、あんさんの言うてはる事、当たっとりますわなぁ。「霊験あらたか」言うたら、あの男山(おとこやま)の八幡(はちまん:京都府・八幡市)はんでも、異変がありましたわなぁ。

世間の声A えーっ その話は、うち知りまへんわ。いったいどないな異変どすかぁ?

世間の声D 6月3日の午前8時から午後10時頃までな、あこの社殿が、鳴動し続けたらしいわ。

世間の声E 神様が放たはった鏑矢が音を発してな、京都めがけて飛んでいった、とかいう話だっせ。

世間の声F そんなの、チョロイんだってぇ! もっとスサマジイ、恐怖におォののく話あぁんだよぉ! 教えたげよっかぁ?

世間の声A いったいなんですのん、それ!

世間の声F あのっさぁ、おたくらっさぁ、夜空を見上げてごらんなって。6月10日から、天空にトォーンデモナイ大異変、起こってんじゃん!

世間の声E あんたの言うてはんのん、「三星直列現象」の事かいな?

世間の声A なんどすか、その「三星直列」?

世間の声E つまりやな、金星と水星と木星が、接近して一列になっとるんやがな。

世間の声F あたいが密かに入手した情報によるとっさぁ、天文局の博士から、「三星直列現象は、大凶事の前兆、天子位を失い、大臣災を受け、子は父を殺し、臣は君主を殺し、飢饉、疫病、戦争あい続き、餓死者がちまたに満ち満ちる事になりましょう」ってな報告、ビィンビン、朝廷に上がってんだってよぉ。

世間の声A エーーツ!

世間の声G 「三星直列」もだけどさぁ、「南東対北西異変」も、あたくし、とっても懸念してるの。

世間の声A なに、それ?

世間の声E 閏の6月5日の午後8時ころにな、南東、北西の2方向から電光(いなびかり)が輝きだしてな、やがて、両方の光が寄り合わさって、戦い合うみたいなカンジになっていったんや。

世間の声B あれは、わたいも見ましたで。光と光がぶつかっては砕け散り、砕け散ったかと思えばまたぶつかりあい・・・ほんまにすごかったわなぁ。衝突が起こるたんびに、ものすごい光がきらめいてな、天と地がバァット燃え上がるように、明るぅなるんですわ。まるで、風が猛炎を吹き上げてるみたいにな。

世間の声C その光の中に、なんか見えへんかったか?

世間の声B あ、あんたも見たんかいな、あれ!

世間の声C 見ぃでかぁ!

世間の声A なになに、いったいなに見はったん!?

世間の声C その光の中にな、わしはたしかに見たんや、バケモノ、妖怪の類の姿をなぁ!

世間の声A おぉ、こわぁ!

世間の声B 結局、あの南東の光と北東の光との勝負、南東側に軍配が上がったようですわなぁ。何度も衝突をくりかえしたあげく、南東の光がどんどん前進していって、北東の光を呑み込むような形になって、そいでから、光、完全に消えよったから。

世間の声G いよいよ、天下騒乱の時節到来の様相、濃くなってきたわよねぇ!

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